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パーティスタイリスト Tokyo Flamingo 代表 久林紘子氏
「最高のギフトを贈りたい」――“パーティスタイリスト”という新領域を開拓

BRANDPRESS編集部
2018/10/24

市場の常識を変えるような華々しいプロダクトやサービスが日々メディアに取り上げられる今日。その裏では、無数の挑戦や試行錯誤があったはずです。「イノベーター列伝」では、既存市場の競争軸を変える挑戦、新しい習慣を根付かせるような試み、新たなカテゴリの創出に取り組む「イノベーター」のストーリーに迫ります。今回話を伺ったのは、パーティスタイリストとして活躍する久林紘子氏。ファッション業界や欧州での生活で培った独自のセンス、色彩感覚を活かし、大人も子どもも楽しめるリュックス感のあるパーティスタイリングを提案しています。最近は、企業イベントの出張スタイリングやインスタグラムマーケティングのコンサルティングにも事業領域を広げた久林氏に、新市場で成功するための秘訣をうかがいました。

 

安室奈美恵さんにあこがれていた幼少期

「パーティスタイリストって、どんなお仕事なんですか」とよく聞かれます。ホームパーティが盛んな欧州に比べると、日本ではなじみの薄い職業なので、そのような質問も当然かもしれません。しかし、すでにホームパーティー検定という専門資格もあり、これから徐々に認知されていくと思います。最近は、雑誌やCM撮影の空間・テーブルスタイリング、企業の公式インスタグラムのディレクションやスタイリング撮影、保育園や店舗などの空間コーディネートにも携わっており、徐々に仕事の幅が広がってきました。

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とはいえ、幼少期からパーティスタイリストを目指していたわけではありません。子どものころからモダンバレエを習っていましたが、安室奈美恵さんにあこがれてストリートダンスを始め、大学でもストリートダンスサークルに入っていました。もちろん踊ることが好きだったのですが、もともと美術が好きだったことも影響し、公演時などの舞台まわりの空間の装飾にも関心がありました。また、ダンスを通してファッションにも興味を持っていました。

 

愛娘の誕生日に撮影した写真が話題に

大学卒業後は、アパレルの会社に就職しました。最初に配属されたのは商品企画部のデザイン課でした。そこでは、何種類もの生地、さまざまな色を組み合わせて、何度も試作が行われます。製作アシスタントだったわたしは、最終的にひとつの作品に仕上がるまでの工程を目の前で見て、デザイナーや先輩たちのプロフェッショナルなこだわりに驚嘆させられました。これまで見たことのない異次元の美意識の世界であり、そこで学んだプロフェッショナリズムと色彩感覚が現在でも役に立っていると思います。

その後、広報部に異動し、マーケティング関連の仕事も行いましたが、出産を機に退職し、家庭に入りました。そして、子供が1歳の誕生日を迎えるとき、子どもの写真を撮影するためにインターネットで写真館の情報を集めました。しかし、どの写真館にも自分たちの雰囲気に合った装飾がありませんでした。そこで、アパレル勤務のころからため込んでいたはぎれを集めてガーランドを手作りしたんです。写真館にお願いしてそれをスタジオ内に飾り、そのほかの備品類もすべて持ち込んで子どもの写真を撮影してもらいました。

その写真は、写真館のホームページにも掲載されたのですが、「そのガーランドで撮影してほしい」という問い合わせが何件もあったそうです。その話を聞いて、こういう装飾のニーズがあることを知りました。

子どもが2歳の誕生日を迎えたときは、アーティフィシャルフラワーで作った花冠を頭に載せて写真を撮影しました。その写真とともに、花冠の作り方をブログで紹介したところ、長期にわたってアクセス数が増えました。インターネットで調べてもシロツメクサの花冠の作り方ぐらいしか情報がなかったので、ママ層にとって役に立ったのだと思います。

 

ホームパーティのインスタ投稿がきっかけに

その後、主人がベルギーに転勤することになり、家族で引っ越しました。ベルギーには、インテリアの装飾に適したかわいいアイテムがたくさんあり、わたしにとって刺激的な毎日でした。色使いや形状などが日本とは異なるんです。

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2年後に帰国することになったのですが、最後に現地の友人を自宅に招いてお別れ会を開催しました。もちろん、装飾はすべて自分で行いました。これがわたしにとって最初のパーティスタイリングでした。その写真をインスタグラムに投稿したところ、ある雑誌のライターさんの目に止まり、取材の依頼とパーティ撮影のスタイリングをお手伝いさせていただく機会をいただきました。帰国したら何らかの仕事がしたいと思っていたのですが、これがきっかけでパーティスタイリングを本格的にやってみようかなと思いました。

 

ポジティブマインドで不安を吹き飛ばす

帰国してすぐ、「Tokyo Flamingo」という名称でパーティスタイリングサービスを開始しました。最初は、キッズパーティのスタイリングのみを手がけていたんですが、すぐに壁に直面してしまいました。自分が作り出した空間が良いのか悪いのかの判断基準がないために、だんだん不安になってしまったんです。自分が不安になると、それがお客様にも伝わってしまう。悩んだ末に、あまり深く考えずに自分が良いと思ったものを作り上げることで、ポジティブにトライしていくことを心掛けました。根拠のない自信かもしれませんが、自分がこだわりを持って手がけることで、自分自身の気持ちが前向きになり、お客様にも満足していただけるものが作り出せると思ったんです。

また、スタイリングする際には“足し算より引き算”を意識するようにしています。クライアントのインスタグラムやプロップのスタイリングをするときによくお伝えしているんですが、予算があるとどうしてもいろいろ盛り込みたくなってしまい、最終的に要素が詰まってしまうんことがあります。心地よい雰囲気を作り出すには“抜き”の構成が必要であり、それを行うことによって逆に引き立つんです。そのため、完成に近づいたら最後に一歩引いて見て、削ぎ落とす部分を考えることにしています。

 

デコレーションを作り上げる過程を楽しんでほしい

起業してしばらくはすべてを1人でやっていたんですが、事業規模が大きくなるにつれてスタッフを増やしていきました。すばらしい仲間とめぐりあうことができ、また多くのお客様からいろいろなアドバイスをいただくことで、ここまで成長することができました。

2018年9月には、これまでに培ってきたパーティスタイリングのノウハウを凝縮した書籍『フォトジェニックなHAPPY BIRTHDAY』を出版しました。この書籍で特に伝えたかったことは、ホームパーティのスタイリングではその出来栄えや見た目を気にするだけでなく、それを作り上げる過程も楽しんでほしいということです。楽しみながら作り上げたパーティスタイリングは、一生の思い出となる最高のギフトになるはずです。そんなスタイリングを今後も提案し続けていきたいですね。

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事業概要:Tokyo Flamingo
所在地:東京都世田谷区
設立:2015年9月
代表:久林紘子
事業内容:パーティスタイリング、プロップスタイリング

 

プロフィール:久林紘子
パーティースタイリスト・プロップスタイリスト
ハイファッションブランドのデザイン課、PRを経験し、オートクチュールからプレタポルテまで、デザインの世界を学ぶ。その後、ベルギー・ブリュッセルにてヨーロッパの文化や色使い、パーティ文化を学び、2015年、ベルギーから日本に拠点を移し、パーティスタイリストとしてフリーランスで活動を開始。雑誌撮影やイベント、CM等の空間スタイリングを行うかたわら、ホームパーティに関する講演、企業のInstagramのディレクションや撮影のトータルプロデュース、近年ではパーティグッズ等の商品開発も手がけ、幅広いジャンルで活動している。2018年9月に初の著書となるparty styling book『フォトジェニックなHAPPY BIRTHDAY』(光文社)を出版。
一般社団法人日本ホームパーティー協会 公式アンバサダー
ホームパーティー検定®エキスパート

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