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内田洋行 執行役員 知的生産性研究所 所長 平山信彦氏
壁を打破するために新領域に挑戦、この繰り返しが今の自分を作り上げた

BRANDPRESS編集部
2018/09/28

市場の常識を変えるような華々しいプロダクトやサービスが日々メディアに取り上げられる今日。その裏では、無数の挑戦や試行錯誤があったはずです。「イノベーター列伝」では、既存市場の競争軸を変える挑戦、新しい習慣を根付かせるような試み、新たなカテゴリの創出に取り組む「イノベーター」のストーリーに迫ります。今回話を伺ったのは、働き方変革を通じた組織風土変革のコンサルティングを行っている内田洋行の平山信彦氏。同社の知的生産性研究所で所長を務める平山氏に、自身の仕事術について聞きました。

 

自分の働く場所をみずから切り拓き続けること

企業人の多くは、会社からの辞令で配属が決まります。しかし、わたしの場合は辞令を待つのではなく、「こういう仕事がしたい」と上司に願い出て、新しい仕事に就いたり、部署を異動したりすることが多かったと思います。学生時代にデザインを専攻していたこともあり、内田洋行にはデザイナーとして入社しました。その後、プロジェクトの立ち上げに関わるマネジメント業務、マーケティングや営業などさまざまな職種を経験し、8年前から現在のコンサルティング業務に携わっています。このような経歴を歩んだ理由は、仕事でぶつかる「壁」とわたしの「新しもの好きな性格」が大きくかかわっています。

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仕事を続けていると、何かしらの「壁」にぶつかることがありますよね。その壁を乗り越えるためのヒントが、まったく別の分野に隠れていることがよくあります。自分の経歴を振り返ってみると、壁にぶつかるたびに新たに別の分野を学び、そちらにおもしろさを感じて新しい仕事に移ることが多かったように思います。「飽きっぽい」といえばそれまでですが、関心を持ったことに後先考えず飛び込むことの繰り返しだったのだなあと、あらためて感じます。

 

米国企業への出向経験からの学び

わたしの場合、最初にぶつかった壁は、デザイナーとしての壁でした。もちろんデザイナーとして入社した当時は、デザインに対して強い想いをもって仕事に取り組んでいました。そんな中、入社から5年ほどが経った1986年、上司に願い出て米国ロサンゼルスの設計事務所に1年間出向することになりました。ここでの経験が、その後のわたしの働き方を大きく変えるきっかけとなりました。

その設計事務所は、都市部の銀行のインテリアデザインを得意としていました。同社では、クライアントにとってベストな銀行の店舗を作るうえで大切なのは、デザイナー自身のセンスだけではなく、展開しているサービスの内容や顧客層、顧客の滞在時間などを分析し、デザインに求められる要件を徹底的に突き詰めたうえで設計をしていました。

これは、わたしにとって大きな衝撃でした。同社での仕事を通して、さまざまな観点からクライアントを理解し、その要望に耳を傾けて「デザインソリューション」を提案することの重要性を知ることができたのです。もちろん、日本で働くデザイナーにとっても必要なスキルですが、当時のわたしは若く経験も浅かったので、働く環境が変わったことが“気づき”のきっかけになったように思います。

米国で得た経験やスキルを持って「デザイナーとして」一皮むけたはずなのですが、帰国したわたしはプロジェクトや事業の立ち上げに携わる「プロデュース」や「マネジメント」の仕事におもしろみを感じてしまい、デザインマネジメントの部署を担当することになりました。おそらく上司はデザイナーとしての腕を磨いてくるだろうと期待していたはずですが、予想外の結果だったと思います(笑)。

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一方で、現在の「コンサルタント」という仕事は、経営やマネジメントだけでなく社員の働き方や意識など、さまざまな観点でクライアントに助言を行う「パートナー」です。結果論ですが、わたしがそのときそのときの関心の赴くままに部署を転々としてきた経歴が、コンサルタント業に活かされているように感じます。

 

新しいことを学ぶ近道はその領域で最もホットな人物に会うこと

仕事術なんて大層なものではありませんが、飽きっぽい性格のわたしが長年続けていることがあります。それは、新しい分野に足を踏み入れるとき、まずは複数の専門家に話を聞くことです。「多くの専門家から名前があがった人が、その分野で最もホットな人物。ひとつの分野を学ぶときには複数の専門家に話を聞くといいよ」という先輩からのアドバイスを参考にしています。

例えば、働き方変革の最新事情が知りたいときに、その分野で著名なA氏という人物がいたとします。まずは1人目としてA氏に話を聞き、「あなた以外にアドバイスを受けるべき人物がいれば教えてください」とお願いをするのです。また、別の専門家にお会いしたときも同様のお願いをします。これを何度か繰り返すと、大抵はだれに聞いても同じ人物の名前があがるようになります。つまり、その方がその分野で最もホットな人物ということになり、その方に話を聞くことができれば、その分野を最も深く理解することができるのです。このやり方は、わたしが長年続けている方法のひとつです。

「内田洋行=オフィス環境の整備」というイメージが強く、サービスインした2010年ごろは、当社が働き方変革のコンサルティングサービスを展開していることは、あまり知られていませんでした。しかし、立ち上げから8年が経過し、契約件数も170件を超える実績を得たことで、コンサルタントとしてのブランドが確立されつつあります。ただ最近は、知的生産性研究所が「働き方変革のコンサルタント」と定義されすぎてしまうことを心配しています。わたしたちが提案するのは、働き方変革という「手段」ではなく、変革によってもたらされる企業の成長や、社員がやりがいを持って働けるワークハピネスを体現した会社づくりです。今後は、働き方変革を強みとしながらも、さまざまな方法で企業の成長とワークハピネスを実現するパートナーになれるよう尽力していきたいですね。

■会社概要:内田洋行
本社所在地:〒104-8282 東京都中央区新川2丁目4番7号
設立:1941年(昭和16年)5月
代表者:代表取締役社長 大久保 昇
資本金:50億円(平成29年7月20日現在)
上場証券取引所:東京証券取引所 市場第一部
従業員数:3,154名(連結)(2018年7月20日現在)
主要な事業内容:
1. 公共関連事業(大学・小中高市場へのICTシステムの構築・機器販売、教育機器の製造・販売、教育施設への空間デザイン及び家具販売など)
2. オフィス関連事業(オフィス関連家具の開発・製造・販売及び空間デザイン・設計・施工など)
3. 情報関連事業(企業向け基幹業務システムの設計・構築及びコンピュータソフトの開発・販売など)

■プロフィール:平山信彦
1981年、内田洋行に入社。1986年に米国ロサンゼルスの設計事務所に1年間出向。帰国後、事業開発、企画、Webサイトの立ち上げなどさまざまな職種を経て、知的生産性研究所の所長に就任。コンサルタントとして企業の働き方変革をサポートしながら、ワークスタイル研究を進める。

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